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新型コロナ後遺症について

現在、日本国内は第7波といわれる新型コロナウィルス感染が広がり、多くの方々が苦しんでおられると思います。その方々の少しでも早いご回復を心より祈っております。

今回は耳鼻咽喉科領域におけるコロナ後遺症について少しですが、まとめてみようと思います。

耳鼻咽喉科領域におけるコロナ後遺症について

新型コロナウィルスのまん延に伴い、様々なコロナ後遺症といわれる症状が指摘されています。

これらの後遺症はコロナ感染後の患者さんの10~30%の方にみられ、半年以上の長期にわたる例もあると報告されています。下に代表的な後遺症について並べてみます。

・全身倦怠感 ・関節痛  ・筋肉痛 ・咳 ・喀痰 ・嗅覚、味覚障害 ・胸痛 ・消化器症状(下痢、腹痛など) ・記憶障害 ・脱毛 ・うつ状態など

これらの中で耳鼻咽喉科領域に関係が深いのは、嗅覚・味覚障害および喉の違和感、咳などが中心になると思います。

これらの原因は上咽頭といわれる鼻と喉の境目の部位に新型コロナウィルスが付着し、炎症を引き起こすことが原因となり、それらの症状を引き起こしている可能性が指摘されています。後遺症の期間は3か月~半年以上も続くこともあり、長く苦しんでおられる方もいらっしゃるようです。

現在、これらの症状の改善に対し様々な方法が検討・実施されています。

当院では、鼻うがいやBスポット療法(上咽頭擦過術)での治療をお勧めしています。

検査・診断

・問診

コロナ後遺症の診断には詳細な問診が必要と考えます。症状の種類、程度、期間や日常における負担などを詳細にお聞きする必要があります。

・咽喉頭ファイバー検査

実際に上咽頭をカメラを用いて観察することによって炎症の判断を行います。上咽頭やその周囲の部位の腫脹、充血、粘膜の腫脹などを観察することによって処置部位の判断を行います。必要であれば採血検査なども併用します。

治療・予後

・Bスポット療法

消毒効果のある1%塩化亜鉛溶液を上咽頭に塗布することで、上咽頭の消炎をはかる、Bスポット療法をお勧めします。週に1回の通院で処置を継続させていただきます。

・鼻うがい

生理食塩水を用いた鼻うがいを行うことで上咽頭の清潔を保つようにします。

・服薬療法

鼻づまりや鼻の粘膜の充血がある場合は、漢方薬なども含めた内服治療を行うこともあります。以前より嗅覚障害に対し漢方薬などによる改善効果が確認されています。

・予後

現在は確立された治療法がなく、治療成績についての報告も少ない状態です。

ただし研究の結果、新型コロナウィルスが上咽頭より侵入することは確認されているので、鼻うがいなどで上咽頭の清潔を保つことは、予防的効果もあるのではないかと考えております。

院長 田中順平

院長の一言メモ
新型コロナ後遺症で悩まれている方は多くいらっしゃると思います。まだ治療法は十分に確立されているとは言えませんが、少しでも良くなる可能性があるものを患者様といっしょにお探しできればと考えております。いつでもお気軽にご相談ください。

秋のアレルギーの原因と対策について

秋のアレルギーとは?

暑かった夏も過ぎ、少しづつ朝夕は涼しくなり秋の気配がするようになりました。それと同時に秋のアレルギー症状で、当院を受診される患者様が増えています。以前よりも秋のアレルギー症状で苦しんでおられる患者様が増えているように感じます。秋のアレルギーでは鼻水やくしゃみなどの鼻症状に加えて、咳や皮膚のかゆみを伴うことが多くみられます。

それでは秋のアレルギーの原因としてどのようなものが重要なのでしょうか?

秋に増えるダニアレルギーとは?

秋のアレルギーの原因として重要なのがダニによるアレルギーです。

家にあるカーペットやクッション、布団などの中にはヤケヒョウダニやコナヒョウダニと呼ばれる小さなダニが存在します。これらは5月~7月の夏季に増殖し、9月~10月に気温が少し下がると死滅します。これらのダニの死骸や糞に含まれるタンパク質に反応してアレルギー症状が生じるとされています。このタンパク質は春の花粉に比べ小さいため、鼻を通り越して気管内に付着し、咳や喉の違和感や喘息症状などの呼吸器症状を呈すると言われています。

また小児喘息の90%以上の患者様がダニアレルギーであるという報告もあり、ダニアレルギーに対する積極的な対策が重要であるとも言われています。

風邪ではないが秋に鼻水や咳、皮膚のかゆみなどが続くときはダニアレルギーの可能性があります。

ダニアレルギーに対する対策は?

ご自宅でできる対策を列記させていただきます。

  • こまめに掃除機をかける。
  • 布団は天気が良ければ、天日干しをして取り込むときに掃除機をかける。
  • カーテンを抗アレルギー仕様に変更する。
  • 畳の上のカーペットは可能であれば撤去する。(抗ダニ仕様のカーペットに変更する。)

クリニックでの検査・治療は?

1. アレルギー検査

アレルギーの採血検査で、原因と対策を検討します。当院では1回の採血で39種類の花粉やペット、食物などを含めた物質を調べることができます。採血の難しい小さなお子様には、指先からの少量の採血でできる検査も可能です。

2. 投薬療法

アレルギーが疑われる場合は、内服薬や点鼻スプレーなどを用いた治療を行います。患者様の症状や生活パターンに合わせて、お薬の組み合わせを工夫することで、症状をしっかりと抑えつつ眠気の少ない治療を選択することができます。

3. 舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

近年、注目を浴びている治療法です。日本ではスギとダニに対する治療が保険適応となっています。アレルギーの原因となる物質を継続して内服(3~5年)することで、アレルギーを起こしにくい体質へと変えていく治療法です。今までのお薬で症状を抑える治療と併用して行うことも可能です。

4.鼻腔粘膜レーザー治療

内服治療などでも鼻閉(はなづまり)が強い方には鼻腔粘膜レーザー治療をお勧めします。夜間の鼻閉が続くといびきや睡眠障害の原因となることがあります。外来でレーザー治療を行いますので入院の必要はありません。施術時に局所麻酔を行いますので痛みはほとんどありません。中学生以上の方が対象となります。

これらの治療を組みあわせて行うことで、早く確実な治療を行うことができます。

院長 田中順平

院長の一言メモ
秋のアレルギーはご自身でも風邪かと思い過ごしていたという方も多くいられます。小さなお子様の長く続く咳の原因となることもあります。当院では小さなお子様でも可能な検査も用意しております。アレルギーの治療は患者様一人ひとりに合わせた、オーダーメイドであるべきと考えています。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。